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Report
2.162021
激しいシェア争いと市場の拡大
2010年4月にはキリンが、「休肝日」という「アルコールメーカーで初めてのキーワード」を商品コンセプトに取り入れたビール風味飲料「休む日のAlc.0.00%」を発売した(「日本産業新聞」2010.5.13)。加えて、アサヒビールもアルコール分0.00%のビール風味飲料「ダブルゼロ」を2010年8月に発売した。この製品の特徴は、製造工程で酵母を使用せず、発酵の工程を経ないためアルコールが生成されないことと、麦汁を使用せず、「麦芽エキス」を用いることで、カロリーもゼロにしたことである(「日本流通新聞」2010.5.26)。
同じく2010年8月には、サントリーがアルコール度数と糖質、カロリーの三つをゼロとしたことを特徴とするビール風味飲料の新商品「オールフリー」を発売した。この商品は予想を大幅に上回る注文で販売見込みが当初計画の二倍に増えたため、一週間で生産が追いつかなくなった(「日本経済新聞朝刊」2010.8.11)。
サッポロも2011年3月に麦芽100%の麦汁にアロマホップを75%以上と、ビール同様の原料を使用したアルコール度数ゼロのビール風味飲料の新商品である「プレミアムアルコールフリー」を発売した(「日本経済新聞朝刊」2011.2.3)。シェア争いで他社に後れをとっていたアサヒビールも、2012年2月に水あめなどの糖類を中心に味つけし、麦汁の余分な甘みがなくなることでよりビールに近づけた「ドライゼロ」を発売した(「朝日新聞」2012.1.11)。
このように、ビール製造大手はアルコールが全く含まれていない新製品を相次ぎ発売した。結果として、富士経済「2021年 食品マーケティング便覧 No.2」のデータによると、2011年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で115.2%、2012年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で122.5%と、引き続き二年連続で大幅な伸びを見せた。
市場がこの時期に一貫して大幅な拡大を記録する一方で、企業別のシェア争いはさらに激しさを増していく。日経テレコンのPOSランキングより試算したノンアルコールビールの企業別シェアは、「フリー」の登場から2010年度まではキリンビールが50%以上を占めていたと考えられる。しかし、2011年からは「オールフリー」が大ヒットしたサントリービールが、2016年に至るまでシェアトップを誇っていた。加えて、「ドライゼロ」を投入したアサヒビールが2012年にはキリンビールのシェアを抜き、サントリービールと激しいシェア争いを演じることとなる。再先発のキリンビールは、直近の2019年にいたるまでシェア三位に甘んじている。