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1.12025
今こそ「酔い」を考える
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目次
はじめに
デジタル大辞泉に依ると、「酔い」とは、「酔うこと」と「ある物事に心を奪われて本心を失うこと。心がくらむこと。」とあり、お酒で酔う状態は前者のことを言う。お酒で酔う状態の定義は辞典に記載がないため、サントリーのWebサイトを確認すると、酔いとは、血液に溶け込んで脳に運ばれたアルコールによって脳が麻痺すること、とある。
多くの人々にとって、アルコールはリラックスや社交の場での潤滑油として欠かせない存在である。紀元前3500年ころには、メソポタミア地方でビールつくりが行われ、紀元前3000年ころにはシュメール人がビールを飲んでいたことが判明しており、人々の生活に古くからアルコールが根付いていることがわかる。
そのように、長い年月をかけて生活に根付いたアルコールに加えて、近年ではノンアルコールドリンクの需要が急速に高まっている。この記事では、「酔い」をテーマに、ノンアルコールドリンクの多様性、その魅力、健康面での利点、そして市場動向について探る。また、今後のノンアルコールドリンクがどのように進化していくのかについても考察する。
ノンアルコールドリンクについて
本サイトでは、ノンアルコール「ドリンク」は、アルコール度数1%未満かつお酒風味という二つの条件を満たした飲料と定義している。お酒風味という条件は、お酒の味を目指したものということであるため、お酒の味を目指していないコーラやオレンジジュースはノンアルコールドリンクと呼ばないこととする。
ノンアルコールドリンクがここまで市民権を得た理由については、相次ぐ飲酒運転の死亡事故や健康志向の高まり、「味」の課題解決、そして新しい飲み方を模索する人々の多様なライフスタイルが影響している。ノンアルコールドリンクの一種であるノンアルコールビールを舞台に、本サイトでは今までの歴史を説明しているので、興味ある方は以下ページをご覧いただきたい。
「酔い」のメカニズム
お酒を飲むとアルコールは胃で約20%、小腸で約80%吸収されて血液に溶け込み、門脈を通って肝臓に運ばれる。肝臓ではアルコールの分解が始まりますが、すぐには分解できないため、大部分のアルコールは心臓に送られ、脳や全身にも運ばれることになる。アルコールが血液によって脳に到達すると脳を麻痺させ、酔った状態を作ります。これが「酔う」ということである。
この酔いがもたらす心地よい状態を楽しむ人々が多い一方で、過度な飲酒が引き起こす健康問題や社会的な影響も少なくない。現代社会では、アルコール摂取が健康に及ぼす悪影響への認識が広まり、また、飲酒を控えるライフスタイルが評価されつつある。特に、ルビーウォリントンという著者が書いた「飲まない生き方 ソバーキュリアス Sober Curious(2021/10/29に日本語訳版発売)」では、禁酒するというスタイルを貫くために、酒に関する疑問をできるだけ正直にキュリアス(好奇心)を持って考える人をソバーキュリアスと定義しており、本サイトの語源となっている。
飲まない生き方 ソバーキュリアス Sober Curious」を読んでみての感想
ノンアルコールドリンクが引き起こす「空酔い」について
ノンアルコールドリンクにはアルコールがほとんど含まれていない(または全く含まれていない)のに、アルコールを摂取した時と同様の「酔い」を感じる時がある。これを「空酔い」と言い、発生する根拠としては以下が考えられる。
①プラセボ効果
ノンアルコールドリンク、特にノンアルコールビールやカクテルは、見た目や香り、味がアルコール飲料に似せて作られる。このため、飲む人が無意識に「アルコールを摂取した」という感覚を持ち、酔いに近い状態を体験することがある。これをプラセボ効果と言い、この心理的期待が体の反応を引き起こし、軽い酔いに似た症状や不快感を誘発する可能性がある。
②社会的条件付けの影響
多くの人はアルコール飲料を飲むことで気分が高揚したり、リラックスしたりする体験をしている。ノンアルコールドリンクを飲むことで、その記憶や体験が呼び起こされ、脳が「酔い」に似た状態を再現する可能性がある。これが、実際にはアルコールを摂取していなくても、酔いの感覚やその副作用のような症状を生じさせる要因になり得る。
CBD製品による「酔い」
また現在では、アルコールとはまた違った「酔い」が味わえるカンナビノイド(CBD等)を含むドリンクも増えてきている。CBDとは、「cannabidiol(カンナビジオール)」の略称で、大麻に含まれる物質「カンナビノイド」の一つで、ストレス解消や睡眠導入、腸の働きの補助、疲労回復など様々な効果があると言われています。一方で、口腔乾燥やふらつき、眠気と言った副作用もあると言われており、それがアルコールの「酔い」と似た症状であることから、本サイトでも今後非常に注目する必要があると考えている成分である。
まとめ
ノンアルコールドリンクは、「味」という面で品質が上がりつつ、健康意識の向上や新しいライフスタイルの象徴として、現代社会で重要な役割を果たしつつある。これらは、飲酒文化の多様化を促し、アルコールに依存しない楽しみ方を提供している。
冒頭の話に戻ると、「酔い」とは、「酔うこと」と「ある物事に心を奪われて本心を失うこと。心がくらむこと。」とある。「味」という部分で各飲料メーカー力を入れる中、消費者が「味」に対して心を奪われるような、そんな製品が出ることを願っている。