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3.172021
ノンアルコールドリンクの無限の可能性 ハラールとムスリムの市場について
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ノンアルコールドリンクには、無限の可能性があると考えています。なぜならば、今までアルコールの味を楽しみたいのに飲めなかったドライバーや妊婦、禁酒中の方にもターゲットが広がるからです。
目次
ムスリムとは
そして近年さらに注目を受けているターゲットが、イスラム教の信者であるムスリムです。日本ハラール協会(https://jhalal.com/halal,2021年3月参照)によると、ムスリムは、「ハラール」というイスラーム法によって合法なものに従い、行動します。一方で、非合法なもののことを「ハラーム」といいます。
ムスリムにとっては、ハラールの食品のみを口にすることが神の教えに忠実に従うことと同等なことのようです。
要するに、ハラールに準ずる製品は、ムスリムをターゲットとして捉えることが出来るのです。
ハラールに準ずる食品
ハラールに準ずる食品は大量にありますが、ここでは本記事と関係のあるハラームとなる食品を簡単に紹介します。ハラームの食品を食べるということは、不浄なものを意味する「ナジス」を体内に取り入れることです。
ナジスの一例として、犬や豚、人や動物の糞尿、ハラールに屠殺されていない動物、そしてアルコールを含む食品と飲料が挙げられます。アルコールを含む製品は、ムスリムの人が口にすることができないのです。
お酒は絶対にダメだね。
そのため、日本市場の大部分を占めるアルコール分を全く含まないノンアルコール飲料は、ムスリムを市場として捉えることが可能なのです。
中東でのノンアルコールビールの展開
実際に、ムスリムが多い中東の国ではノンアルコールビールの輸入が増えているとされています。実例として、JETROのホームページ(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/85181b16184d1028.html,2021年3月参照)に記載されていた、サウジアラビアを取り上げます。
サウジアラビアの首都であるリャドでは、市中、または観光客やビジネス客が多い高級ホテル等でもアルコール飲料の提供や流通がなく、輸入も固く禁じられているそうです。
ビール党にとっては辛い状況ですね。
そのため、ビールをどうしても飲みたい場合は、アルコール分が0.0%に抑えられたノンアルコールビールを飲むこととなります。実際に売店の売り場では、多くのノンアルコールビールが販売されているそうです。
市中で販売されている製品はほとんどが欧米からのものである一方、和食レストランの増加に伴い、二年前からは、日本のノンアルコールビールが並行輸入で入り始めたそうです。
※JETROの記事より著者作成。単位はおそらく千円。
世界の和食レストランの増加に伴い、ムスリムの多い国でも日本のノンアルコールビールの輸入が増加すると予測されます。
日本のノンアルコールビールの強みと弱み
加えて、日本のノンアルコールビールは低カロリーな製品が多く、1缶当たりに70kcal程度含む欧米のノンアルコールビールと比較し、非常に健康的という特徴があります。このことは、健康志向が高まるサウジアラビアの需要を捉える大きな強みであると言えます。
しかし、日本の製品には大きな弱点があります。それは、価格の高さです。欧米ブランドは、税込みで店頭小売価格1缶当たり6リヤル前後(約180円、1リヤル=約30円)の一方、日本ブランドは同17リヤルと価格帯が非常に高いのです。地理的な面もありますが、今後は製造工場の現地化や関税対策等を含めたコスト削減が、サウジアラビアにおける日本のノンアルコールビール普及の大きな鍵となりそうです。
まとめ
以上、ムスリムのイスラーム法の簡単な説明と、サウジアラビアでのノンアルコールビール市場の可能性について説明してきました。今回取り上げた事例はサウジアラビアのみですが、ムスリムが多い他の中東地域や今後経済発展が見込まれ、一部地域でムスリムの増加が観測される東南アジアにも、ノンアルコールドリンクの波は必ず来ると予想できます。
その時に備え、日本のメーカーはノンアルコールドリンクの質を高め続ける必要があるのです。