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12.182022
ノンアルメーカー紹介:麒麟麦酒(キリンビール)株式会社
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目次
はじめに
「ノンアルメーカー紹介」シリーズは、ノンアルドリンク市場に製品を投入するメーカー単位でクローズアップし、歴史や製品の紹介、特徴を紹介していく記事です。
第一弾は、キリンビール株式会社です。個人的にはキリンビールが無ければ日本におけるノンアルコールドリンク市場はここまで盛り上がっていなかったのでは、と感じております。特に2009年4月にキリンビールから発売された「フリー」は、世界で初めてアルコール分を全く含んでいないノンアルビールであり、味も悪くなかったため、今日のノンアルドリンク市場が形成された土台を築いたのであります。
メーカーの会社概要
商号:麒麟麦酒株式会社(以下キリン)
設立:2007年7月1日
本社所在地:東京都中野区中野四丁目10番2号 中野セントラルパークサウス
資本金:300億円
従業員数:3,604名(2021年12月31日時点)
ノンアル市場においての歴史
歴史の始まり
キリンがノンアルというテーマで初めて新聞紙面に出たのは、提携関係にあるオランダ・ハイネケン社のノンアルコールビール「バクラー」発売時です(「日本産業新聞」1999.4.28)。バクラーはビールと同じ製法ですが、発酵を抑えることでアルコール度数を約0.5%とした製品です。
このバクラ―、酵母の熱処理が不十分なまま出荷された場合に時間がたつと白濁したり、アルコール度数が本来の約0.5%から1%台まで上昇する恐れがあるというデリケートな製品であり、2004年には自主回収されたという歴史を持ちます(「日本産業新聞」2004.6.16)。
自社製品の発売
その次に発売されたのが、独自の原料配合などで苦みを抑え、ビールらしくないすっきりとした後味とした「モルトスカッシュ」です。当時のキリンは、ノンアルコールビールというビールの代替品でなく、大人向けの甘くない炭酸飲料として売り込み、「清涼発泡飲料」という新カテゴリーの創出を目指しました。アルコール度数はバクラ―と同じく0.5%含まれておりましたが、日経POSデータの商品別シェアでは一時的に首位に立ち、一定程度の成功は収めたようです。最大の売りは一缶当たりのカロリーが49kcalと低い点です。
フリーの発売
2007年9月の道路交通法改正から飲酒運転や酒気帯び運転が厳罰化され、ドライバーに酒を勧めることも刑罰の対象に加わりました。これによりアルコール度数の低いビール飲料の需要が高まる中、2009年4月にキリンから発売されたのが、「フリー」なのです。
この製品の最大の特徴はアルコール分が全く含まれていないことであり、ビール酵母を使わないことにより世界で初めてこれを実現しております(「日本経済新聞朝刊」2009.1.10)。
当初この製品はスポーツ後や運転者の飲用を想定していましたが、酒を控える必要がある妊産婦らにも購買層が広がり、一部スーパーなどで品切れの店も出たようです(「日本産業新聞」2009.5.15)。
キリンによるフリーへの力のかけ方は大きく、発売当初は麦汁にコメやスターチなどを使っていた部分を、ビールに近いコクを出すために麦芽100%とする等、発売後も味の改良を重ねていました。
健康志向への挑戦
2010年4月にはキリンが、「休肝日」という「アルコールメーカーで初めてのキーワード」を商品コンセプトに取り入れたビール風味飲料「休む日のAlc.0.00%」を発売しております(「日本産業新聞」2010.5.13)。これは2010年4月からキリンが展開している健康食品の新ブランド「プラス―アイ」の一製品で、アミノ酸の1種で肝機能回復などに効果があるとされるオルニチンを使った製品です。(「日本産業新聞」2010.4.14)。
その後も機能性表示食品である「パーフェクトフリー」を発売する等、他社と比較して健康志向を押し出した製品が目立ちましたが、アサヒのドライゼロやサントリーのオールフリーの勢いに押されており、現在ではシェア三位に甘んじている状態です。
直近の動き
直近のノンアルドリンクの柱は「グリーンズフリー」と「零ICHI」です。どちらの製品も最近アサヒが打ち出している微アルコール飲料とは一線を画しており、完全なノンアルコール飲料となります。微アルコール飲料とは、アルコールが完全にゼロなのではなく、0.5%と微量に含まれている製品です。
主要製品の紹介
グリーンズフリー
内容量 | 350ml・500ml |
原材料名 | 麦芽(外国製造)、大麦、米発酵エキス、ホップ、炭酸 |
エネルギー(100ml) | 9kcal |
たんぱく質(100ml) | 0.1g |
脂質(100ml) | 0g |
炭水化物(100ml) | 2.2g |
食塩相当量(100ml) | 0~0.02g |
- ビールの原料と同じ麦とホップと水 を主原料とし、 香料・人工甘味料無添加 で素材本来の味わいや香りを楽しめます。
- ノンアルを麦とホップでおいしくする 自然派製法 を採用している。自然派製法とは、 素材の良さを引き出した雑味のない味わい を実現する製法のことです。
- ビールと同じ麦芽・大麦とみずみずしい香りが特長の 希少ホップ「ネルソンソーヴィン」を一部使用 しています。
- 麒麟麦酒株式会社が製造しています。
- パッケージは、自然生まれの爽快感・良質さを表し、 店頭で目立つグリーンのグラデーション を全面に配しています
苦み | ★★★★★ |
甘み | ★ |
再現度 | ★★★★★ |
コスパ | ★★★★★ |
色はスタンダードな黄金色です。 泡のたちは良いですが、香りは薄め です。 自然派と名乗るだけあり、 一口目から自然な麦の味が広がり、雑味がない美味しさ です。 苦味強く、甘味は弱め です。 とくに 後味がビールに近く、キレが強い です。 コスパは最強 か。
零ICHI
内容量 | 350ml・500ml・334ml(瓶)、250ml |
原材料名 | 麦芽(外国製造)、水あめ、食物繊維、米発酵エキス、ホップ、炭酸、香料、酸味料、調味料(アミノ酸)、乳化剤 |
エネルギー(100ml) | 9kcal |
たんぱく質(100ml) | 0.1g |
脂質(100ml) | 0g |
炭水化物(100ml) | 2.2g |
食塩相当量(100ml) | 0~0.02g |
- 「キリン 零ICHI」は、 「一番搾り製法」 で麦のうまみをていねいに引き出した、おいしさをゆっくり味わえるノンアルコール飲料です。
- 味の特徴は、 「一番搾り製法」 で、麦のうまみをていねいに引き出したおいしさです。
- 麒麟麦酒株式会社が製造しています。
- パッケージは、ビールのような品質感と、麦のうまみを感じられるデザインです
苦み | ★★★★★ |
甘み | ★ |
再現度 | ★★★★ |
コスパ | ★★ |
色は本物のビールに似ており、黄金色です。 香りはかすかに麦を感じることができます。 一口目から苦みを強く感じることができます。 若干酸味も感じることができます。 のど越しが良いため、ごくごく飲むことができます。 個人的には、ビールに近い味であると感じたため、おススメの商品です。
カラダFREE
内容量 | 350ml |
原材料名 | 難消化性デキストリン(食物繊維・韓国製造)、熟成ホップエキス、ぶどう糖果糖液糖、大豆たんぱく、米発酵エキス/炭酸、香料、酸味料、カラメル色素、甘味料(アセスルファムK)、苦味料 |
エネルギー(350ml) | 9kcal |
たんぱく質(350ml) | 0.4g |
脂質(350ml) | 0g |
炭水化物(350ml) | 7.7g |
食塩相当量(350ml) | 0~0.1g |
- 本商品は、 熟成ホップ由来苦味酸を機能性関与成分として初めて販売 された、お腹まわりの脂肪を減らすという機能性表示食品のノンアルコール・ビールテイスト飲料です。
- ビールの原材料であるホップから開発された 「熟成ホップエキス」(特許取得) を使用しています。「熟成ホップエキス」とは、 お腹まわりの脂肪を減らす機能 を実現します
- 本商品は、肥満傾向な方に適しています。
- 麒麟麦酒株式会社が製造しています。
苦み | ★ |
甘み | ★ |
再現度 | ★ |
コスパ | ★★ |
ゼロハイ氷零グレープフルーツ
内容量 | 350ml |
原材料名 | 難消化性デキストリン(食物繊維・韓国製造)、グレープフルーツ果汁、炭酸、酸味料、香料、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、苦味料 |
エネルギー(100ml) | 0kcal |
たんぱく質(100ml) | 0g |
脂質(100ml) | 0g |
炭水化物(100ml) | 7.8g |
食塩相当量(100ml) | 0g |
- 食事の糖や脂肪の吸収を抑えるファンケル「カロリミット」 と、キリンのノンアルコールチューハイ 「氷零」 がコラボレーションした、グレープフルーツ風味の製品です。
- キリンビール株式会社とファンケル株式会社が共同開発し、製造しております。
- 食事にぴったりな爽快な味わいです。
- また、 「カロリーゼロ」かつ「糖類ゼロ」 です。
- 加えて、 350mlあたり5gの難消化性デキストリン(食物繊維) を配合しています。難消化性デキストリンには、 食事の糖や脂肪の吸収を抑える機能 が報告されています。
酸味 | ★★★ |
甘み | ★★ |
再現度 | ★★★ |
コスパ | ★★★★ |
色は若干黄色みがかった透明です。 鼻を近づけると、グレープフルーツの香りが強く飛んできます。 甘みも酸味もあまり強くありません。すっきりした味が好きな方にはおススメかも。 後味も非常にさっぱりしています。 機能性表示食品の中では価格も高くなく、味も良いためかなりおススメのノンアルコールサワーです。
製品の特徴
直近の動きでも書いてある通り、現時点では完全なノンアルコール飲料のみを発売しております。これは、アルコール分を全く含まない「フリー」よる市場形成者としての自負や、微アルコール市場への会議的な姿勢がうかがえます。
個人的には完全なノンアルコールビールのメーカーとしては国内最強の味及び再現性を有していると考えており、特に「グリーンズフリー」の自然な麦の味が広がり、雑味がない美味しさ、苦味の強さ、後味のキレは特筆すべきものです。
また、サワー風味やカクテル風味の製品にはあまり力を入れていない印象です。
まとめ
現在ではシェア三位に甘んじているキリンですが、ノンアルビールメーカーの先駆けとして一番頑張ってほしい会社です。味はぴか一なのにも関わらずシェアを伸ばせないのは、アサヒやサントリーと比較してマーケティングが弱いからでしょうか。
今後の展開としては、アサヒやサッポロが打ち出している微アルコール飲料とは引き続き一線を画していくと予想されます。「フリー」のような圧倒的な大ベストセラーがまたキリンから発売されることを強く願います。