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1.42023
ノンアルメーカー紹介:アサヒビール株式会社
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目次
はじめに
「ノンアルメーカー紹介」シリーズは、ノンアルドリンク市場に製品を投入するメーカー単位でクローズアップし、歴史や製品の紹介、特徴を紹介していく記事です。
今回は、アサヒビール株式会社です。ノンアルビールがここまで市民権を得たのは「味」の進化が大きいですが、その部分でアサヒビールの「ドライゼロ」が多大に貢献したと考えています。現在でも微アルコールというカテゴリを根付かせようと沢山の製品を市場に投入しておりますので、今後も注目していきたいメーカーとなります。
メーカーの会社概要
商号:アサヒビール株式会社(以下アサヒ)
設立:2011年7月1日
本社所在地:東京都墨田区吾妻橋1-23-1
資本金:200億円
従業員数:5,754名(2020年12月時点)
ノンアル市場においての歴史
歴史の始まり
アサヒがノンアルに関係したテーマで初めて新聞紙面に出たのは、アルコール度数が二%前後の「超低アルコール」のビールや酒の発売が相次いでいた際に出た記事です(「朝日新聞」1997.6.15)。しかし、キリンビールや宝酒造が「超低アルコール」製品を相次いで発売する中、アサヒは全く関与ませんでした。
アサヒがノンアル製品を本格的に取り扱い始めたのは、輸入ノンアルコールビールである「レーベンブロイ・アルコールフリー」が最初となります。アサヒと提携関係にある独レーベンブロイ社の製品であり、フィルター除去や加熱殺菌で酵母の働きを制御し、アルコール度数を0・5%未満に抑えていました(「日本産業新聞」2002.12.13)。
自社製品の発売
アサヒビールが自社製品を発売したのは2009年の9月にビール風味飲料「ポイントゼロ」のが最初です。一般的なビールとは異なり、麦とホップを煮て作った麦汁に炭酸を加えた製法が特徴であり、4月に発売されていたキリンの「フリー」を追随しての発売と見ています。飲酒できない乗用車の運転者らがメインターゲットでした(「日本経済新聞」2009.7.15)。
アサヒはその後、「アサヒ ダブルゼロ」2010年8月に発売されました。本製品は製造工程で酵母を使用せず、発酵の工程を経ないためアルコールが生成されないことに加え、麦汁を使用せず、「麦芽エキス」を用いることで、カロリーもゼロにしております(「日本流通新聞」2010.5.26)。
製品の特徴でも後述しますが、アサヒは他社の製品の後に同質化した製品を発売し、シェアを奪っていくというやり方が非常に上手いです。今回のダブルゼロもサッポロのスーパークリアというカロリーや糖質を抑制した製品からシェアを奪うべく発売したと見られます。
ノンアルカクテルの発売
アサヒの特徴として、ノンアルカクテル等のビール以外での製品発売が目立ちます。例えば、アルコール度数とカロリーが共に0のカクテル風味飲料である「ダブルゼロカクテル」を2009年9月に発売し、女性に支持され、販売が好調だったようです(「日本産業新聞」2011.8.2)。
ドライゼロの発売
満を持して発売された「ダブルゼロ」は、生産拠点の福島工場が被災したこともあり、販売数が他社と比較して伸びませんでした(「日本産業新聞」2009.5.15)。そして、味わいでも、宣伝戦略でも後れを取ったとの反省から発売された新商品が、「ドライゼロ」です。特徴としては水あめなどの糖類を中心に味つけすることで麦汁の余分な甘みを無くし、味をよりビールに近づけたそうです。「ドライゼロ」は「味」という部分に特徴を持たせたため、市場の仲介者であるスーパーのバイヤーが製品を評価する際に最も重要なものとされています(「日本流通新聞」2012.2.27)。これが受け入れられ、2012年以降のアサヒのノンアル製品シェアは首位もしくは2位を守っているのです。
透明飲料への挑戦
2018年5月にサントリーから発売された色が透明でペットボトルに入れたノンアルコールビール飲料である「オールフリーオールタイム」に対し、アサヒもペットボトル入りのノンアルコールビールである「ドライゼロスパーク」を2018年7月から期間限定で売り出したようです(「日本産業新聞」2018.6.8)。本製品はあまり評判が良くなく、サントリーと共にすぐに発売を止めています。
直近の動き
直近のアサヒのノンアルドリンクの柱は「微アルコール飲料」です。微アルコール飲料とは、アルコールが完全にゼロなのではなく、0.5%と微量に含まれている製品を言います。なぜアルコールが含まれた製品を発売したかと言うと、アルコールを抜いたほとんどの製品は、麦汁のえぐみや化学調味料等の不快な味を充分に取り除くことが出来ずに、ビールとは言えない代物も多々ある。そのため、多少アルコールが含有されていても、ビール好きには美味しいノンアルコールドリンクの需要があると推察されるからです。一応説明すると、0.5%ものアルコールを含んでいても、酒税法上ノンアルコール飲料として扱われます。
主要製品の紹介
ドライゼロ
内容量 | 350ml・500ml・334ml(瓶) |
原材料名 | 食物繊維(仏国製造、国内製造)、大豆ペプチド、ホップ、炭酸、香料、酸味料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK) |
エネルギー(100ml) | 0kcal |
たんぱく質(100ml) | 0g |
脂質(100ml) | 0g |
炭水化物(100ml) | 0.4~1.4g |
食塩相当量(100ml) | 0~0.04g |
- 麦汁を原料とする他社商品と異なり、 糖類や大豆ペプチド、ホップなどでビールの味を再現 しています。
- 日経のPOSデータによると、 現在スーパーマーケット等で一番売れているビール です。
- 他社の基本的な製法である麦汁発酵により生まれる 甘みや雑味を抑えています。
- さらに、 ろ過前に氷点下2度程度で貯蔵 することで後味をすっきりとさせています。
- アサヒビール株式会社が製造しています。
- パッケージはスーパードライと似ており、一時期問題視されました。
- 糖質とカロリーがゼロであるため、 ダイエット中にも是非おススメ の商品です。また、泡が長持ちするように工夫しております。
苦み | ★★★★ |
甘み | ★★ |
再現度 | ★★★★ |
コスパ | ★★★★ |
飲んだ感想としては、 後味がビールに近い味であり、苦みもキレもあります。 もはや 麦芽や麦汁を使わない という逆転の発想により、 ビールの後味に近づけている と考えられます。 泡のたちが良く 、香りは華やかです。香りは若干オールフリーに似ているイメージです。 まさに日本のピルスナービール好きのためのビールといった感じでしょうか。年配の方が好みそうな味です。 味は消費者に高く評価されており、 2018年頃から製品シェアトップ です。
スタイルバランス香り華やぐハイボールテイスト
内容量 | 350ml |
原材料名 | 難消化性デキストリン(食物繊維・韓国製造)、炭酸、香料、酸味料、カラメル色素、甘味料(アセスルファムK、スクラロース) |
エネルギー(350ml) | 0kcal |
たんぱく質(350ml) | 0g |
脂質(350ml) | 0g |
炭水化物(350ml) | 7.8g |
食塩相当量(350ml) | 0g |
- 華やかなコクと香りにソーダの爽快なのどごしというハイボールのような飲み口を、 「アルコールゼロ」「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」 で実現したノンアルコールの機能性表示食品です。
- アサヒビール株式会社が製造しております。
- 本商品は 難消化性デキストリン(食物繊維) を5g含有しております。難消化性デキストリンには、 食事の脂肪や糖分の吸収を抑える機能 があることが報告されています。
酸味 | ★ |
甘み | ★★★ |
再現度 | ★★ |
コスパ | ★★ |
香りは若干ハイボールに近いです。 色は薄い黄金色で、炭酸はあまり強くありません。 味は最初にウイスキーっぽい味がしますが、すぐに不自然な甘味に変わります。 後味はすっきりしています。 再現度はあまり高くありません。
ビアリー
内容量 | 350ml |
原材料名 | 麦芽(国内製造)、スターチ、麦芽エキス、ホップ、コーン、米、炭酸 |
エネルギー(100ml) | 33kcal |
たんぱく質(100ml) | 0.1g~0.5g |
脂質(100ml) | 0g |
炭水化物(100ml) | 7.4g |
食塩相当量(100ml) | 0~0.03g |
- ビールのような本格的なおいしさ を、シーンやペースに合わせて自由に楽しめる、アルコール分0.5%のビールテイスト飲料です。
- ビールを醸造してから、アルコール分のみをできるだけ取り除く製法によって、 100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現 しました。
- 麦のうまみとコクがもたらす心地いい気分や上質なリラックス感を楽しめる商品です。
- アサヒビール株式会社が製造しています。
苦み | ★★★★★ |
甘み | ★ |
再現度 | ★★★★ |
コスパ | ★★★★★ |
泡の立ちが良く、まるでビールみたいです。 色は少し濃い黄金色です。 香りは若干弱いですが、麦の香りがしっかりします。 一口目から強烈な苦みが感じられ、のど越しが良いです。 後味もあっさりしており、アサヒらしくキレもあります。 後味に若干雑味が残りますが、十分美味しいです。 アルコールを微量に含んでいるため注意しましょう。
ビスパ
内容量 | 750ml |
原材料名 | ワイン、ぶどう果汁/炭酸ガス、香料、酸化防止剤(亜硫酸塩) |
エネルギー(100ml) | 30kcal |
たんぱく質(350ml) | 0g |
脂質(350ml) | 0g |
炭水化物(350ml) | 7g |
食塩相当量(350ml) | 0g |
- ワインのような本格的なおいしさを、シーンやペースに合わせて自由に楽しめる、アルコール分0.5%の微アルコール(ワインテイスト)飲料です。
- ぶどう本来のフレーバーを十分に抽出することができる脱アル製法と、あえて0.5%のアルコールを残すことで、ワインらしい本格的な味わいを実現しました。
- 豊かな果実味と、丸みのある酸味がバランスの良い、フルーティーで洗練された味わいです。
- アサヒビールビール株式会社が製造しております。
酸味 | ★★★★★ |
甘み | ★★★ |
再現度 | ★★★★★ |
コスパ | ★★★★ |
香りは完全にスパークリングワインです。 色は白ブドウをぎゅっと絞ったような感じです。 一口目から非常に強く酸味を感じます。ノンアルのスパークリングワインでは強いほうです。 炭酸も結構強く、苦手な方は注意してほうがよいです。 ブドウの渋みもしっかりと再現されており、ノンアルを飲んでいると感じさせません。 後味も酸味を強く感じます。 とにかくこのドリンクを一言で表すと「酸味」です。酸味が強いスパークリングワインが好きなから方には再現性が高く非常におススメです。
製品の特徴
先述しましたが、アサヒは他社の製品の後に同質化した製品を発売し、シェアを奪っていくというやり方が非常に上手いです。このやり方は製品開発に多大な投資が必要となるため、アサヒだからきることでもあります。
また、ノンアルカクテルやサワーの製品も積極的に発売しており、今後も多様なノンアル製品を発売していくと見られます。
【参考】のんある探訪:SUMADORI-BAR SHIBUYA
まとめ
ドライゼロという大ヒット製品を発売した後も、ビアリーのような多様な製品を発売し続けているアサヒです。おそらくノンアル市場に対して投入した資金は日本のメーカーではNo1なので、ノンアルテゴリー形成に寄与したことは言うまでもありません。
今後の展開としては、サッポロと共にが打ち出している微アルコール飲料にある程度までコミットすしていくしていくと思われます。