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「ノンアルコールビール」市場への新規参入者の増加

需要が増加した結果として、普段はアルコールを含むビールを販売する製造業者の「ノンアルコールビール」市場への新規参入が増加することとなる。すでに「バービカン」で市場に参入していた宝酒造に加え、2002年11月にはサントリーが専用のビール酵母を使い、仕込みから充てんまでを同社の武蔵野ビール工場で行う「ファインブリュー」を、12月にはサッポロビールが原料に麦芽やホップ、水あめ等を使い、独自の発酵技術で製造した「スーパークリア」を発売した。二つの商品はどちらもアルコール度数が約0.5%である一方、酒税法の対象とならないため、炭酸飲料として販売された(「日経産業新聞」2002.10.22)。この二社の新製品は、日本国内で一から製造し販売するノンアルコールビール製品としては国内初のものであると考えられる。しかし、当時のサッポロビールは「スーパークリア」を「ノンアルコールビール」と称さず、ビール風の味がする意味での「ビアテイストの炭酸飲料」と強調していた。理由についてサッポロは「アルコール度数はゼロではなく、消費者に誤解を与えないため」と説明していた。(「日経プラスワン」2002.12.14)。

また、キリンビールも2003年5月に独自の原料配合などで苦みを抑え、ビールらしくないすっきりとした後味とした「モルトスカッシュ」を発売した。しかし当時のキリンビールは、ノンアルコールビールというビールの代替品でなく、大人向けの甘くない炭酸飲料として売り込み、「清涼発泡飲料」という新カテゴリーの創出を目指した。

自社開発の製品を発売した三社に対してアサヒビールは2003年2月に、輸入ノンアルコールビール「レーベンブロイアルコールフリー」を発売している。これは、アサヒと提携関係にある独レーベンブロイ社の商品であり、フィルター除去や加熱殺菌で酵母の働きを制御し、アルコール度数を0.5%未満に抑えている製品である(「日本経済新聞朝刊」2002.12.17)。

このように、企業ごとに販売する製品の特徴が異なるが、道路交通法改正が追い風となり、ノンアルコールビールの製品は増加することとなった。しかし、この製品数の増加が引き金となり、各社の値引き合戦も激化している。まず、キリンビールが新製品の「モルトスカッシュ」を350ml缶で発売することを発表したことを皮切りに、2003年4月にサントリーが「ファインブリュー」の350ml缶の希望小売価格を20円下げて130円に変更し、サッポロビールもサントリーと同じく350ml缶の希望小売価格を20円下げて130円に変更した。このような2003年の各社の値下げ合戦は、価格という点でノンアルコールビール市場の拡大にある程度寄与したと考えられる。

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