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市場への逆風

読売新聞が記事上でノンアルコールビールにも少量のアルコールが含まれているため、乳児に対して母乳を与える母親に対して注意を促した(「読売新聞朝刊」2003.4.6)ことを皮切りに、市場への逆風が吹き始めた。主婦連合会が「ノンアルコール」と表示しながら、製品に1%未満のアルコール分を含むことを問題視しているという記事も同時期に取り上げられている(「日経産業新聞」2003.4.18)。加えて、ノンアルコールビールのような小数点以下のアルコール分の摂取でも、運転に影響を及ぼすという記事もある(「朝日新聞」2003.4.21)。このように、ノンアルコールビールの販売が伸長するに連れ、製品に含まれる微量のアルコールに対する課題が論点に上がるようになった。結果として、公正取引委員会は2003年4月に、「アルコールが含まれている情報をきちっと消費者に伝えるように」とビール酒造組合に検討を促している。

そのような動きに一早く反応したのがサントリービールである。2003年の5月より、アルコール分を0.5%未満含み、「ノンアルコールビール」の表示が消費者の誤解を招きかねないと判断したため、サントリービールはノンアルコールビールとして販売してきた「ファインブリュー」のラベル表示を「ビールテイスト飲料」に変更した(「日本経済新聞朝刊」2003.4.23)。加えて宝酒造は、2003年5月下旬製造分から「バービカン」にある「ノンアルコールビールテイスト」の表示を、「ビアテイストドリンク」に変更している(「毎日新聞」2003.7.8)。また、記事に詳細の記載がないが、アサヒビールも輸入品のノンアルコールビールの表示変更を決めていたようだ。

2003年6月には、主婦連合会が微量でもアルコール分を含む飲料を「ノンアルコール」や「アルコールフリー」などと称するのは消費者の誤解を招き、景品表示法上の不当表示に当たるとして、公正取引委員会に調査と景表法に基づく措置を講じるよう申告した。加えて、アルコール分未記載の商品や、記載が側面に小さく書かれて読みにくい商品が混在し、消費者の誤認を招いているとも訴えた(「朝日新聞」2003.6.13)。結果として、公正取引委員会は2003年7月に、業界団体に対し、表示の適正化を事業者に指導するよう要望した(「朝日新聞」2003.7.15)。この要望を受け、キリンビールは輸入している「バクラー」で、8月の製造分から「ノンアルコールビール」の表記をやめ「ビールテイスト飲料」に切り替えた。アサヒビールも輸入している「レーベンブロイアルコールフリー」で、7月上旬製造分から「ノンアルコールビール」の表記を「ビールテイスト清涼飲料」に切り替えたようである(「日本流通新聞」2003.7.22)。このように、表記に関する記事が全国紙において大々的に報じられることとなり、「ノンアルコールビール」の製品に対し世間の風当たりが強くなったことが予想される。

逆風が吹き荒れる中でも、輸入品の販売でのみ市場に参入していたアサヒビールが2003年11月に、自社製品である「ポイントワン」を発売した(「日本流通新聞」2003.9.11)。この製品の大きな特徴はアルコール分が0.1%未満ということであり、消費者の意見を反映したものと考えられる。

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