Report

ノンアルコールビールの歴史 ~微アルコールカテゴリー創造への挑戦(2021年3月30日~)~

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

コロナウイルスの発生

成功したとは言えない透明のノンアルコールビール、サントリーの「オールフリーオールタイム」が発売終了してから約一年、コロナウイルス患者が国内で確認された。特に観光業界のようなサービス業界はインバウンドの激減等でまさに緊急事態となった。

コロナウイルスに影響を受ける業界が多い中でも、2021年に入ってからさらに地獄を見ているのが飲食業界、特に酒類を提供する飲食店である。2021年7月13日時点で4度の緊急事態宣言が東京を中心に発出されているが、4月25日から5月31日までの3度目の緊急事態宣言では、広い範囲で酒類提供の禁止が要請された。そして4度目の緊急事態宣言では、7月12日から9月30日までという2ヵ月間、東京を中心に再び酒類提供の禁止が要請された。

これは正に、米国で過去に行われていた「禁酒法」に近しい環境になっているのである。

禁酒が叫ばれる世の中になると、必然とノンアルコールドリンクの需要は高まる。これは実際にノンアルコールビールが、1920年代に禁酒法が敷かれた米国でビールの代替品として誕生したことから始まっていることからもわかる。

そして今回のコロナウイルスの影響は、ノンアルコールドリンクの需要の増加にも寄与した。これまでお酒を提供してきた飲食店では、必ずと言っていいほどノンアルコールドリンク、特にビールが提供されているようだ。都内ではノンアルコールドリンク専門のバーまで出てきており、今後も店舗が拡大されていくのではないかと予想される。

数字の面でも結果がでており、酒造メーカーの月桂冠より発売されているノンアルコール日本酒「スペシャルフリー」は、2019年と比較して2020年12月の時点での年間売上が3倍となったようで、その後も増加傾向とされている(「テレビ朝日」2021.9.15)。

アサヒによる微アルコール製品の発売

順調にノンアルコール市場が拡大していく中で、どうしてもノンアルコールドリンクが本当のお酒に勝てない部分がある。それは、「味」である。例えばノンアルコールビールを嗜む層は、ビールを普段嗜む人々だと考えられる。ビールの味は苦く独特であるため、普段ビールを一切飲まない人がノンアルコールビールを飲むとは考えにくい。そのため、ノンアルコールビールで一番重要なのは、「味」であると本サイト管理者のhk5は考えている。アルコールを抜いたほとんどの製品は、麦汁のえぐみや化学調味料等の不快な味を充分に取り除くことが出来ずに、ビールとは言えない代物も多々存在する。

その「味」の課題を解決するために2021年3月30日にアサヒが発売したのが、「ビアリー」である(「酒類飲料日報」2021.1.8)。この製品の大きな特徴は、アルコールが完全にゼロなのではなく、0.5%と微量に含まれているという点だ。ただ、0.5%ものアルコールを含んでいても、酒税法上ノンアルコール飲料として扱われる。

【参考】ノンアルコールドリンクの定義

アルコールを抜いたほとんどの製品は、麦汁のえぐみや化学調味料等の不快な味を充分に取り除くことが出来ずに、ビールとは言えない代物も多々ある。そのため、多少アルコールが含有されていても、ビール好きには美味しいノンアルコールドリンクの需要があると推察される。なお、アサヒビールは、従来のビアリーにフルーティーな香料を加えた「ビアリー 香るクラフト」を2021年6月29日に(「アサヒビールプレスリリース」2021.4.26)、2021年8月30日にビアリーと同じく0.5%ものアルコールを含むハイボールテイスト飲料「ハイボリー」を発売している(「東洋経済」2021.8.30)。

サッポロの追随と業界による「微アルコール」カテゴリー創造

アサヒビールが続々と微アルコール製品を発売する中、他メーカーでいち早く呼応したのがサッポロビールである。サッポロビールは2021年9月14日にアルコール度数0.7%を含む「The DRAFTY」を発売した(「サッポロビールプレスリリース」2021.7.13)。製品情報によると、この「The DRAFTY」の売りは麦の旨みを感じるスムースな「味」わいであり、ビアリーが重視している部分の重なる。ビアリーやThe DRAFTYの売上により、サントリーやキリンと言った競合他社も追随することが見込まれる。

この他社の製品の特徴を模倣して製品を発売する流れは、キリンビールが「フリー」を発売した2009年頃にも見られた。2009年4月に発売された「フリー」の販売好調を受けて、その後他社からアルコール度数完全ゼロのビールが続々と発売されたのである。2010年6月にはアルコールに加えカロリーと糖質までゼロにした「オールフリー」をサントリーが発売し、他社もアルコールとカロリー、糖質ゼロの製品を発売する。結果として、製品の同質化(同じ特徴を持つ製品が増えること)が進んだことでアルコールとカロリー、糖質ゼロという特徴を備える製品が増え、アルコール分ゼロかつ機能的という「ノンアルコールビール」の規範が当事者間に完成した。この規範により、酔うための飲み物という「ビール」の意味を再定義し、機能的かつ多様な場面で楽しめる飲み物という新規性のある意味を持たせることで、飲料市場のカテゴリーの一つとして「ノンアルコールビール」カテゴリーは創造されたのである。

以上より、今後もアルコール0%超1%未満で「味」を重視したノンアルコールドリンクが増加すると、それが「微アルコール」というカテゴリーで世間に定着し、新しいカテゴリーが生まれると見られる。サッポロビールの「The DRAFTY」発売は、アサヒビールの動きに呼応し、早めにカテゴリー需要を取り込みたいという思惑が見て取れるのだ。

ノンアルコールビールの歴史 ~本テーマの説明~

ノンアルコールビールの歴史 ~黎明期(~2002年5月31日)~

ノンアルコールビールの歴史 ~道路交通法の改正(2002年6月1日~)~

ノンアルコールビールの歴史 ~道路交通法の改正(2007年9月1日~)~

ノンアルコールビールの歴史 ~新制度「機能性表示食品」の登場(2015年4月17日~)~

ノンアルコールビールの歴史 ~微アルコールカテゴリー創造への挑戦(2021年3月30日~)~

関連記事

ページ上部へ戻る