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ノンアルコールビールの歴史 ~新制度「機能性表示食品」の登場(2015年4月17日~)~

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市場の伸びが鈍化

好調に市場を拡大し続けるノンアルコール市場であったが、2013年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で102.0%、2014年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で101.1%と、次第に成長の鈍化を見せ始めた。また、2013年および2014年の企業シェアは、トップがサントリービール、二位がアサヒビール、三位がキリンビール、四位がサッポロビールである。シェア争いという点でキリンビールは2010年から、サッポロビールは2011年から一貫としてシェアを落とし続けていた。特にサッポロビールは2014年の企業シェアが1%以下と、他の三社から完全に引き離されている。

「サッポロプラス」における特定保健用食品(以下トクホ)の表示許可

こうした中で、サッポロビールの「サッポロプラス」と、花王の「へルシアモルトスタイル」という二種類のノンアルコールビールにおいて、消費者庁は2015年2月に特定保健用食品(以下トクホ)の表示を許可した(「読売新聞」2015.2.18)。トクホとは健康増進法に基づき、健康の維持や増進に役立つ内容が表示できる許可制度である。申請当初は未成年者の飲酒を助長するなどとして、内閣府の消費者委員会がトクホの表示は不適切だと答申していた。しかし、消費者庁の許可により、「サッポロプラス」は、穀物のでんぷんから作る食物繊維「難消化性デキストリン」を含むため「糖の吸収を穏やかにする」という表示が可能となった。「ヘルシアモルトスタイル」においては、茶カテキンを多く含むため「脂肪を消費しやすくする」と表示を認められた。結果的にサッポロビールは、2015年5月に「サッポロプラス」を全国のスーパーやコンビニエンスストアでの販売を開始した(「日本経済新聞朝刊」2015.3.24)。サッポロビールは、出荷額の伸び悩みとシェア低下に苦しむノンアルコールビール市場において、このような製品を投入することにより、普段ビールを飲まない健康志向の新規顧客の拡大を図ったと見られる。

「機能性表示食品」制度の開始

2015年4月からは、健康にどのような効果があるかを食品に表示しやすくすることで、健康食品市場の拡大を目的とする「機能性表示食品」制度が始まった。この制度は、健康に与える効果の科学的根拠を示す論文や表示内容を消費者庁に届け出れば、60日後には販売する製品に表示することが出来るものである(「日本経済新聞朝刊」2015.4.2)。この制度を活用し、サッポロビール以外のビール製造大手三社も2015年6月に続々と新商品を投入することとなる。まず16日にキリンビールが「パーフェクトフリー」を、23日にアサヒビールが「スタイルバランス」を発売した。これら二商品はサッポロビールと同じく難消化性デキストリンという食物繊維を配合しており、食事時の脂肪や糖の吸収を抑える効果を表示した(「日本経済新聞朝刊」2015.5.23)。一方でサントリーは30日にコラーゲンを配合した「オールフリーコラーゲン」を全国発売した。コラーゲン入り商品を開発したきっかけは、ノンアルコールビールの消費者に占める女性の割合が52%と男性を上回ったことである(「日本産業新聞」2015.5.28)。

 しかし、これらの製品の販売は思うような伸びを見せなかったようである。キリンの「パーフェクトフリー」は2015年の年間計画に対し約三割、アサヒの「スタイルバランス」は一割強の販売にとどまった。その理由は、すでにアサヒとサントリービールがカロリーや糖質、プリン体などをゼロに抑えるなど機能性を訴えた商品で激しい競争を演じていたため、トクホや機能性表示食品で従来品との明確な違いを伝え切れていなかったからである(「日本流通新聞」2015.10.26)。それでも多少の新規需要の開拓が出来たようで、2015年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で104.0%、2016年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で105.7%と、過去二年より若干の伸びを見せた。

透明なノンアルビールが登場

2017年からは、ノンアルコールビールの総販売額の伸びが鈍化していく。特に2017年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で99.9%と、2009年から初めて前年比割れとなった。その後の二年も2018年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で102.5%、2019年度のノンアルコールビールの総販売額は前年比で101.6%と微増にとどまっている。この期間には、2018年5月にサントリービールが色は透明にし、ペットボトルに入れたノンアルコールビール飲料である「オールフリーオールタイム」を発売している。一般的な清涼飲料のような見た目にすることで、職場でも抵抗感なく飲めるようにし、若い会社員のニーズの開拓を目指した(「日本経済新聞朝刊」2018.5.9)。それに合わせてアサヒビールもペットボトル入りのノンアルコールビールである「ドライゼロスパーク」を2018年7月から期間限定で売り出した。蓋をしめられ、持ち運びしやすいペットボトルに入れることで、アウトドアやスポーツ向けの需要を取り込むことを目的としている(「日本産業新聞」2015.6.8)。二社により従来にない革新的な製品が発売された一方で、「透明な飲料について」という題目でインターネット調査会社のマクロミルが調査したところ、今後飲みたい透明飲料の割合は「ノンアルコールビール」が9%と少なく、消費者からの反響は良くなかったようである(「日本流通新聞」2018.8.29)。

結果として、サントリービールは「オールフリーオールタイム」を2019年3月に休止した。サントリービールの担当者は「商品の良さをうまくアピールできなかった。将来、再参入する可能性はあるが、いったん休止する」としている(「読売新聞」2018.6.19)。

ノンアルコールビールの歴史 ~本テーマの説明~

ノンアルコールビールの歴史 ~黎明期(~2002年5月31日)~

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ノンアルコールビールの歴史 ~新制度「機能性表示食品」の登場(2015年4月17日~)~

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