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ノンアルコールビールの歴史 ~道路交通法の改正(2002年6月1日~)~

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道路交通法の改正

「ノンアルコールビール」に関する記事が新聞に再び増加したのは、2002年以降のことである。記事の増加には、2002年6月1日に行われた道路交通法改正が大きく関係している。改正の内容としては、酒気帯び運転の基準が従来の呼気一リットル中のアルコール濃度が0.25ミリグラム以上から0.15ミリグラム以上となり、懲役や罰金等の罰則も強化された(「日本流通新聞」2002.6.13)。この改正により、郊外店の居酒屋では顧客が減少し、2002年6月から7月の売上高は軒並み前年同期比2割減となり、自家用車での来店が多かった中部地区や北関東地区では3割近い落ち込みの店舗も存在していた(「日本経済新聞朝刊」2002.8.24)。

ノンアルコールビールの需要増加

道路交通法改正の結果として、代行運転業者と提携することに加え、ノンアルコール飲料のメニューを増やすことにより、飲酒運転の防止に様々なサービスを取り入れる飲食店が増えたのである(「読売新聞」2002.9.14)。加えて、消費者の健康志向の高まりもノンアルコールビールの販売に追い風となった。肝臓への負担を気にしてビールを控える動きが高まっており、それは「休肝日」という言葉が登場したことからも確認することができる(「日経産業新聞」2002.12.12)。

市場への新規参入者が増加

需要が増加した結果として、普段はアルコールを含むビールを販売する製造業者の「ノンアルコールビール」市場への新規参入が増加することとなる。すでに「バービカン」で市場に参入していた宝酒造に加え、2002年11月にはサントリーが専用のビール酵母を使い、仕込みから充てんまでを同社の武蔵野ビール工場で行う「ファインブリュー」を、12月にはサッポロビールが原料に麦芽やホップ、水あめ等を使い、独自の発酵技術で製造した「スーパークリア」を発売した。二つの商品はどちらもアルコール度数が約0.5%である一方、酒税法の対象とならないため、炭酸飲料として販売された(「日経産業新聞」2002.10.22)。この二社の新製品は、日本国内で一から製造し販売するノンアルコールビール製品としては国内初のものであると考えられる。しかし、当時のサッポロビールは「スーパークリア」を「ノンアルコールビール」と称さず、ビール風の味がする意味での「ビアテイストの炭酸飲料」と強調していた。理由についてサッポロは「アルコール度数はゼロではなく、消費者に誤解を与えないため」と説明していた。(「日経プラスワン」2002.12.14)。

また、キリンビールも2003年5月に独自の原料配合などで苦みを抑え、ビールらしくないすっきりとした後味とした「モルトスカッシュ」を発売した。しかし当時のキリンビールは、ノンアルコールビールというビールの代替品でなく、大人向けの甘くない炭酸飲料として売り込み、「清涼発泡飲料」という新カテゴリーの創出を目指した。

自社開発の製品を発売した三社に対してアサヒビールは2003年2月に、輸入ノンアルコールビール「レーベンブロイアルコールフリー」を発売している。これは、アサヒと提携関係にある独レーベンブロイ社の商品であり、フィルター除去や加熱殺菌で酵母の働きを制御し、アルコール度数を0.5%未満に抑えている製品である(「日本経済新聞朝刊」2002.12.17)。

各社の値引き合戦

このように、企業ごとに販売する製品の特徴が異なるが、道路交通法改正が追い風となり、ノンアルコールビールの製品は増加することとなった。しかし、この製品数の増加が引き金となり、各社の値引き合戦も激化している。まず、キリンビールが新製品の「モルトスカッシュ」を350ml缶で発売することを発表したことを皮切りに、2003年4月にサントリーが「ファインブリュー」の350ml缶の希望小売価格を20円下げて130円に変更し、サッポロビールもサントリーと同じく350ml缶の希望小売価格を20円下げて130円に変更した。このような2003年の各社の値下げ合戦は、価格という点でノンアルコールビール市場の拡大にある程度寄与したと考えられる。

市場に立ち込める暗雲

好調のノンアルコールビール市場に暗雲が立ち込めたのも2003年である。まず、読売新聞の記事では、ノンアルコールビールにも少量のアルコールが含まれているため、乳児に対して母乳を与える母親に対して注意を促した(「読売新聞朝刊」2003.4.6)。また、主婦連合会が「ノンアルコール」と表示しながら、製品に1%未満のアルコール分を含むことを問題視しているという記事も同時期に取り上げられている(「日経産業新聞」2003.4.18)。加えて、ノンアルコールビールのような小数点以下のアルコール分の摂取でも、運転に影響を及ぼすという記事もある(「朝日新聞」2003.4.21)。このように、ノンアルコールビールの販売が伸長するに連れ、製品に含まれる微量のアルコールに対する課題が論点に上がるようになった。結果として、公正取引委員会は2003年4月に、「アルコールが含まれている情報をきちっと消費者に伝えるように」とビール酒造組合に検討を促している。

そのような動きに一早く反応したのがサントリービールである。2003年の5月より、アルコール分を0.5%未満含み、「ノンアルコールビール」の表示が消費者の誤解を招きかねないと判断したため、サントリービールはノンアルコールビールとして販売してきた「ファインブリュー」のラベル表示を「ビールテイスト飲料」に変更した(「日本経済新聞朝刊」2003.4.23)。加えて宝酒造は、2003年5月下旬製造分から「バービカン」にある「ノンアルコールビールテイスト」の表示を、「ビアテイストドリンク」に変更している(「毎日新聞」2003.7.8)。また、記事に詳細の記載がないが、アサヒビールも輸入品のノンアルコールビールの表示変更を決めていたようだ。

「ノンアルコール」表示の適正化

2003年6月には、主婦連合会が微量でもアルコール分を含む飲料を「ノンアルコール」や「アルコールフリー」などと称するのは消費者の誤解を招き、景品表示法上の不当表示に当たるとして、公正取引委員会に調査と景表法に基づく措置を講じるよう申告した。加えて、アルコール分未記載の商品や、記載が側面に小さく書かれて読みにくい商品が混在し、消費者の誤認を招いているとも訴えた(「朝日新聞」2003.6.13)。結果として、公正取引委員会は2003年7月に、業界団体に対し、表示の適正化を事業者に指導するよう要望した(「朝日新聞」2003.7.15)。この要望を受け、キリンビールは輸入している「バクラー」で、8月の製造分から「ノンアルコールビール」の表記をやめ「ビールテイスト飲料」に切り替えた。アサヒビールも輸入している「レーベンブロイアルコールフリー」で、7月上旬製造分から「ノンアルコールビール」の表記を「ビールテイスト清涼飲料」に切り替えたようである(「日本流通新聞」2003.7.22)。このように、表記に関する記事が全国紙において大々的に報じられることとなり、「ノンアルコールビール」の製品に対し世間の風当たりが強くなったことが予想される。

逆風が吹き荒れる中でも、輸入品の販売でのみ市場に参入していたアサヒビールが2003年11月に、自社製品である「ポイントワン」を発売した(「日本流通新聞」2003.9.11)。この製品の大きな特徴はアルコール分が0.1%未満ということであり、消費者の意見を反映したものと考えられる。

ノンアルコールビールの歴史 ~本テーマの説明~

ノンアルコールビールの歴史 ~黎明期(~2002年5月31日)~

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