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9.242022
なぜノンアルドリンク市場は伸び悩んでいるのか?
この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。
目次
ノンアルドリンク市場の現状
「ノンアル」という言葉が一般的になって久しいです。過去に調査した結果によると、2006年から2019年までの14年間で市場は約八倍と激増しています。特にキリンの「フリー」が発売された2008年~2009年辺りからの伸び率が大きいです。
※なぜ市場が伸びたかについての解説は、以下記事を読んでいただきたいです。
最新の推定市場データについては、サントリーがレポートで出しております。
本レポートに依ると、2020年のノンアルコール飲料市場は2,313万ケース(対前年103%)と、2015年より6年連続で伸長が続き、過去最大の市場規模になったと推定されています。2021年には、さらに約2,570万ケース(対前年111%)と、市場規模は引き続き拡大すると見込まれています。
さて、なんとなくですが、市場が2012年辺りからかなり鈍化していると感じませんか?2021年はあくまで見込のため、もしかしたら下振れするかもしれません。本記事では、ノンアルドリンク市場の伸び悩みについての考察を記載していきます。
ノンアルドリンク市場の限界について
市場というものには、人口が増え続けるという状況にない現在の日本では基本的に限界値があります。それでは、ノンアルドリンク市場の限界は大体どれくらいなのでしょうか。
まず大前提として、あくまでもノンアルドリンクはアルコールドリンクの代替品に過ぎないということです。普段ビールを飲まない人が、多少味の劣るノンアルビールを飲むということは到底考えられません。そのため、飲酒する人の総数がノンアルドリンク市場の限界ということになります。
厚生労働省の統計に依ると、月に1日以上飲酒する人の割合は44.4%となっています。意外にも定期的に飲酒している人の割合は過半数にも満たないのです。
この数値からノンアルドリンク市場の限界をしてみましょう。健康意識が進み、飲酒者が飲酒日の3分の1を禁酒日にするとして、一回のノンアル消費量を700ml(350ml×2)とすると、約261万Kℓとなります(日本の人口1億2,000万円で試算)。サントリーの統計だと2021年見込みで約32万Kℓのため、まだ8倍程度の拡大余地があると言えます。
ノンアルドリンク市場が伸びない理由
ノンアルドリンク市場が限界まで伸びてない理由は、休肝日のアルコールの代替品となり得ていないということが考えられます。先ほど試算した統計では、休肝日にノンアルドリンクを必ず飲むという前提としていたため、現状ではアルコールの代替品となり得ていないという風に考えることができます。
私hk5は、ノンアルドリンクが休肝日のアルコールの代替品となり得ていない理由が大きく分けて二つあると考えています。
①料金が安くない
まず一つ目の理由としては、料金が安くないということが挙げられます。ノンアルコール飲料の専門商社であるアルトアルコに依ると、コンビニ各三社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)で販売されているビール、ノンアルコールビール、発泡酒、新ジャンルの全14種類四ジャンルの販売価格(350mlあたり)を比較した結果、ノンアルコールビールと新ジャンルのビールの価格差がほぼないという結果になりました。
また、総務省統計局の調べに依ると、一世帯当たりのワイン年間購入平均額は3,363円、平均数量は3,243mlであり、換算すると約104円/100mlに対し、市販されているノンアルコールワイン(スパークリング含む)35種類の平均参考価格は214円/100mlであり、実際に消費されているワインよりも倍も高いことがわかります。
この料金であればわざわざノンアルコールビールやワインを購入せず、スーパーで購入した安い炭酸飲料や水やお茶で済ませる方も多いかもしれませんね。とにかく、酒税がかかってくる飲み物と料金がそこまで変わらないことは市場の伸びが鈍化している一つの理由なのかもしれません。
②味が良くない/再現性が低い
ニつ目の理由としては、味が良くない/再現性が低いということが挙げられます。他の記事でもお酒の味を模すノンアルコールドリンクにとって、「アルコール感」を出すことは非常に重要なことであると考えます。なぜならば、ノンアルコールドリンクの主要ターゲットは普段お酒を飲む人のため、お酒の味に近いという「アルコール感」をださないと、飲むインセンティブが無いからです。
近年は味や再現度が向上していますが、製造方法等の工夫でこれからさらにノンアルドリンクの品質向上に努めていく必要がありそうです。
【参考】ノンアルコールドリンクの「アルコール感」の出し方について
まとめ
以上、ノンアルドリンク市場の伸び悩みについての考察を記載してきました。ノンアルに関係する記事を記載する立場上、低価格化や品質の向上により、さらにノンアルドリンク市場が盛り上がると嬉しいです。