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なぜ清涼飲料水の棚にノンアルコールドリンクが置いていないのか?

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コンビニやスーパーで感じる違和感

皆さんはコンビニやスーパーでノンアルコールドリンクを購入する際に、違和感を感じたことはありませんか?

アルコールを微量含むならまだわかりますが、アルコールを全く含まないノンアルコールドリンクもアルコールコーナーに置いてあるのです。普通は清涼飲料水でも良い気もするのですが。

例えば私がよく行くスーパーでは、サワーや第三のビールの間にノンアルコールビールが置いてあります。パッと見は完全にお酒です。

これは、なぜなのでしょうか。ノンアルコールの歴史より紐解いていこうと思います。

ノンアルコールビールの歴史

ノンアルコールビールの歴史 ~黎明期(~2002年5月31日)~

ノンアルコールビールの歴史 ~道路交通法の改正(2002年6月1日~)~

ノンアルコールビールの歴史 ~道路交通法の改正(2007年9月1日~)~

ノンアルコールビールの歴史 ~新制度「機能性表示食品」の登場(2015年4月17日~)~

ノンアルコールドリンクの歴史は飲酒運による事故や表示に対する規制、主婦連との闘いの中にありました。歴史を紐解いていくと、ノンアルドリンクがアルコールコーナーに置いてある理由が分かります。

①子供が飲んでしまう

まず飲酒が社会問題化していた2003年には、主婦連合会事務局長の佐野真理子さんが「新しい表示ではビールと炭酸飲料の境がぼやけて、子供がビールに近づくきっかけになる」と声を挙げていました(2003/7/8,毎日新聞)。

また、消費者団体の主婦連合会としては、「本物のビールを飲むことへの垣根を低くする」として、未成年者が飲むことには反対の立場をとっています。実際、メーカーも缶には「20歳以上を想定して開発した商品」などと刷り込んでいます(2011/1/8,朝日新聞)。

ここから分かるのは、清涼飲料水コーナーにノンアルコールドリンクがあると、子供が飲んでしまうという懸念があり、それを避ける理由があると考えます。ノンアルコールドリンクは定義上アルコール1%未満ということなので、それを口にすると酔ってしまう恐れがあります。

【参考】ノンアルコールドリンクの定義

②元アルコール依存者や予備軍が飲んでしまう

キリンビールは、「フリー」が発売された直後の2010年春に妊婦が公園でフリーを飲むテレビCMの放映や、2010年5月の母の日の前には、産院で商品を配るキャンペーンも予定していた。

しかしところが「待った」がかかってしまいました。アルコールなど依存性薬物問題に取り組むNPO法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)が、「酒を飲む若い女性が増えており、妊娠・授乳期は飲酒習慣を断つチャンス。ビールの代替物を飲み続けていると、また酒を飲む生活に戻ってしまう」と、キャンペーンをやめるよう要望書を出し、キリンがキャンペーンを中止したという経緯があります。

また、キリンはアルコールゼロをうたう「フリー」を売り出したのはCSR(企業の社会的責任)の一環で、「飲酒運転をなくしたい」との思いからです。実際、ゴルフの後に運転して帰る時や、酒を飲めないのに酒席に出なければならない場合に重宝され、各社も相次いで発売、需要が一気に広がった。その一方で、この商品は「飲酒習慣」という精神的な依存の問題までゼロにしたわけではない。アルコール依存症専門病院の新生会病院(大阪府和泉市9には通院患者から「ノンアルコールビールなら飲んでいいか」という質問が届いていたそうです。

アルコール依存症には、アルコールが切れると汗が出たり手が震えたりする身体依存と、「酒がないといられない」「物足りない」と思う精神依存があります。「ノンアルコールビールは確かにアルコールは摂取しないが、精神的にはビールを飲む行為と極めて近く、酒がない生活への回復を妨げる恐れがある」として、和気浩三院長は患者に飲まないよう指導しているそうです(2011/1/8,朝日新聞)。

以上より分かるのは、清涼飲料水コーナーにノンアルコールドリンクがあると、元アルコール依存者やその予備軍が誤って飲んでしまうという懸念があり、それを避ける理由があると考えます。

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