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ノンアルコールビールの歴史 ~黎明期(~2002年5月31日)~

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米国での誕生

ノンアルコールビールは、1920年代に禁酒法が敷かれた米国でビールの代替品として誕生したことから始まる。英語では「Near Beer」と呼ばれていた(「日本経済新聞夕刊」1988.9.30)。

日本での誕生

一方で、日本におけるノンアルコールビールの歴史は、ビアテイスト飲料の元祖と言える「ホッピー」を販売するホッピービバレッジ株式会社のホームページによると、大正末期から始まるとされている(https://www.hoppy-happy.com/products/hoppy/,2020年10月参照)。当時の日本ではビールが高級品であったため、ビールに味を似せた飲料である「ノンビア」が大流行したそうである。

「ホッピー」の誕生

その後「ノンビア」の流行が終息する一方で、1948年7月15日にホッピービバレッジ株式会社が「ホッピー」を発売し爆発的に売れた。この製品が売れた理由としては、戦後の日本においてアルコールの粗悪品が多く流通していたため、粗悪なアルコールの割り材として人々に受け入れられたと考えられる。しかし、現在にいたるまで一貫して「ホッピー」は焼酎の割り材としての立ち位置であり、瓶や缶の状態から飲むという現在のノンアルコールビールとは状況が多少異なる。

「ノンアルコールビール」という言葉の登場

新聞記事において「ノンアルコールビール」という言葉が最初に出てくるのは、アルコール類の輸出入等を手掛ける日本酒類販売株式会社が、西独ヘニンガー社から輸入販売しているノンアルコールビール「ゲステル」の販促活動を取り上げた記事である(「日経産業新聞」1982.10.12)。その後に新聞記事においてノンアルコールビールの販売が取り上げられたのは、清涼飲料水の輸入および販売会社アメリカンテクニカルマーケティングが、米国のビールメーカーであるパール・ブルーイング社からノンアルコールビール「NA」の日本国内における独占輸入販売権を取得し、1985年6月上旬から本格販売を行うという記事(「日経産業新聞」1985.5.29)であり、それまで約三年間「ノンアルコールビール」という言葉は出てこない。1985年まで新聞から「ノンアルコールビール」関係の記事が四つしか抽出できなかったことを鑑みると、当時の「ノンアルコールビール」カテゴリーは非常にマイナーであり、一般消費者に充分な認知がされていなかったと言える。

「ノンアルコールビール」の浸透

「ノンアルコールビール」に関する記事が新聞に増加し始めたのは、1986年からである。この年は三菱商事が総代理店となり、宝酒造が英国バス・ブリュワリー社の「バービカン」の輸入販売を2月から始めた。この「バービカン」は、バス・ブリュワリー社から原液を輸入し、千葉県松戸市の工場でボトリングしているもので、アルコール分は0.02%である。焼酎ブームが陰りを見せている時期であったため、宝酒造は本事業を「焼酎、清酒、みりんなど酒部門に次ぐ柱にしていく」方針であった(「日経産業新聞」1986.2.7)。本事業は、宝酒造が1986年の「バービカン」の販売計画を当初見込みから上方修正した結果を見ると、ある程度の成功を収めたと見られる。しかし、宝酒造の専務は「バービカン」をビールの飲めない場面で仕方なしに飲む代替品と考えておらず、「ノンアルコールビール」という言葉を使わない方針(「日経ビジネス」1986.3.31号39頁)であった。このことから、「バービカン」が発売された当時は「ノンアルコールビール」という言葉は一般的に認知されていなかったと見られる。その後、ノンアルコールビールは日本において徐々に浸透していき、1988年時点において日本での国産、輸入物合わせ製品が30銘柄にも達した(「日本経済新聞夕刊」1988.9.30)。

しかし、これらの製品の元になる原液は全て輸入に頼っていた(「日本経済新聞夕刊」1988.10.1)。1999年5月には大手ビール製造業者では初めて、キリンビールが提携関係にあるハイネケン社のノンアルコールビールである「バクラー」を東京と千葉、神奈川、埼玉で発売したが、大きな売上に繋がらなかったと見られる(「日経産業新聞」1999.4.28)。

ノンアルコールビールの歴史 ~本テーマの説明~

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