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ノンアルコールビールの製造方法

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本記事では、主要なノンアルコールドリンクであるノンアルコールビールの製造方法をまとめ、解説したものです。製造方法の調査には、日本ビール検定公式テキスト「ノンアルコール醸造酒の製造方法」を参考にしています。

なお、本記事でのノンアルコールの定義は、アルコール度数1%未満かつお酒風味という二つの条件を満たすものと定義します。

【参考】ノンアルコールドリンクの定義

ビールの原材料

ノンアルコールビールの製造方法を語る上で、そもそものアルコール入りのビールの製造方法を調査する必要があります。その理由は、アルコール1%以下のノンアルコールビールを造る際には、ビールの製造方法を途中で止めることや、工程を飛ばす等、アルコール入りのビールの製造フローの一部で調整することが多いからです。

なお、日本におけるビールの原材料は大きく分けて四つあります。

二乗大麦(六条大麦)

ビールの主原料の一つとして、まず大麦があります。その大麦を「麦芽」という状態にして、ビールに使われるのです。

麦芽とは、水分を含ませ発芽させた後、焙煎させたものです。主に二条大麦から作られますが、麦茶の原料である六条大麦から作られるビールも登場しております。焙煎の深さにより、麦芽の色が変わり、完成されたビールの色も変わります。色だけではなく、味も全然違います。

ホップ

麦芽に続いて、ビールに欠かせないのが、ホップです。ホップとは、つる性のアサ科の植物のことであり、ビール醸造には雌株の球花と呼ばれる部位が使用されます。ホップを入れる目的としては、苦みを与えることや腐敗を抑えること等、様々なものがあります。

比較的涼しいところで栽培が盛んであり、基本的にはドイツやチェコ産のホップを使うことが多いようです。日本だと岩手県遠野市などの東北地方が産地として有名です。

ビールに限ることではないですが、お酒を造る際には水が味に多大な影響を与えます。例えば、軟水を使ったビールは味がまろやかになるのに対し、硬水を使ったビールは辛くさっぱりした味になるようです。

そのため、水を磨くという、水の硬度を調整するという工程が一部の製品には存在するようです。

副原料

ビールを製造する際には、味の調整にコーンスターチや米を使用することがあります。例えば、副原料として米やコーンスターチが使われるビールも存在します。これら副原料により、発酵の助成やビールの味を調整し、バランスのよいものにします。

ちなみにドイツでは、「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」というビールの純粋令があるためビールに副原料を使用することができません。

【参考】ドイツのビール純粋令と、純粋令を守るノンアルコールビール一覧

ビールの製造方法

では、そもそもビールはどのように製造されるのでしょうか。

①製麦工程

大麦を発芽させて麦芽をつくる工程を「製麦」と言います。大麦に含まれているデンプンやたんぱく質を糖やアミノ酸に分解する酵素をつくったり、大麦の成分を酵素で分解されやすい状態に変化させたりする工程です。

②仕込工程

麦芽、ホップ、副原料を使用して、糖やアミノ酸を含んだ麦汁をつくる工程です。麦芽を細かく砕いて湯を入れ、麦のおかゆである「マイシェ」にします。マイシェの中では、麦芽の中で生成・活性化された酵素の働きで、デンプンが糖に、タンパク質がアミノ酸に分解されます。

続いて、ろ過によってマイシェから固形分を取り除きます。こうして得られた麦のジュースを麦汁と呼ぶそうです。さらに得られた麦汁にホップを加えて煮沸することで苦みと特有の香りを付加します。

③発酵・貯酒工程

前工程で製造された麦汁に酵母を加えて、アルコールと炭酸ガスを作り出す工程が「発酵」です。この工程で出来上がったビールは「若ビール」と呼ばれます。その後さらに貯酒を行ってビールを熟成させます。ビールの風味が特徴づけられる重要な工程です。

④ろ過工程

濁っているビールを澄んだ液体に変える工程が「ろ過」です。ビールの濁りがなくなりクリアになるだけでなく、酵母を除去することで発酵を止め、ビールの品質を保持します。

⑤パッケージング工程

出来たビールを出荷するため「びん」「缶」「樽」の容器に詰められて製品化される工程です。

ノンアルコールビールの製造方法

ノンアルコールビールの製造方法は、「ノンアルコール醸造酒の製造方法」を参考にまとめます。ノンアルコールビールの製造方法は大きく分けて五つあります。ただ、実際にはいくつかの方法を組み合わせることが普通のようです。

①アルコール潜在量の低減

使用原料である麦芽の量を減らして原麦汁濃度を下げ、発酵してもアルコールが1%以上になることを防ぐ方法です。しかし、この方法では水臭さが残り、ビール特有のコクや風味が出なという課題があります。

「手づくり麦芽飲料キット」として販売されている、モルトエクストラクトを使用したノンアルコールビールの製法と基本的に同じです。ソバキュリ!では今後「手づくり麦芽飲料キット」を使用し、美味しいノンアルビールの製造を行う予定です。

②発酵性糖の比率軽減

これは原料配合や糖化プロセスの工夫によって麦汁中の発酵性糖の比率を下げるもので、発酵後の残エキスが多くなる分、①の方法の課題であったコクや風味を出しやすい方法です。しかしこの方法でもビールのコクや風味に近づけるという点に関してはやや課題があるそうです。

③発酵の停止

①と②の味に関する課題をカバーする方法として考えられるのが、発酵途中で人為的に発酵を停止する方法です。これは、アルコールを1%未満に留めつつ麦汁エキスを多く残し、それにより可能な限りビールの味に近づけるというものです。しかし、この方法ではアルコール度数1%未満になるように発酵を停止させることが、非常に困難です。

また発酵時に低温下で高濃度の酵母を添加する方法等が研究・発表されているようです。

④アルコールの除去

味や香りを最もビールに近づける方法が、通常通り発酵させたのちにアルコールだけ除去するやり方です。近年では減圧蒸留法や逆浸透膜法といった低温下で選択的にアルコール除去が可能な方法が普及しており、比較的美味しいノンアルビールが出来上がります。

多くの輸入ノンアルコールビールやノンアルコールワインがこの方法で造られています。しかし、国内では「一度造ったアルコールを除去してノンアルコール製品にする」という行為自体が法的に認められない可能性が高いそうです。

⑤麦汁から甘みや重みを取り除く

以上紹介してきたノンアルコールビールの製造方法の共通点は、アルコール度数を1%未満に抑えられるものの、0.00%まで抑えることは技術的に難しいことです。このような状況の中、二年の歳月をかけてキリンが開発したのが、2009年に発売された「フリー」で使われた方法です。今まで紹介してきたいずれの方法も採用せず、麦汁から直接甘みや重みを取り除くという清涼飲料で使われる技術でビールに仕立てたそうです。

終わりに

以上、ノンアルコールビールの製造方法を紹介してきました。ソバキュリ!では様々なノンアルコールビールを紹介していますので、自分好みの製品を探してみて下さい。

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